情報商材被害について|弁護士松本理平先生に伺いました。

消費者詐欺被害防止に注力されている松本 理平先生にお話を伺いました。

・最近の消費者詐欺の動向や特徴(仮想通貨活用などの動き)
・被害の特徴、被害拡大の手口
・弁護士に依頼するときのチェックポイント・報酬体系
・解決のための新しい動き(集団訴訟の構想)
・返金される可能性、返金までの時間
・被害に遭わないための心構え、遭った時の対応(弁護士相談がふさわしい理由)

など、みなさんの気になる疑問点について丁寧に解説していただきました。
この記事をご一読いただき、被害の防止と解決にお役に立てれば幸いです。

インタビュー担当:玉上 信明(たまがみ のぶあき)
(社会保険労務士・健康経営エキスパートアドバイザー)

弁護士 松本 理平プロフィール

所属弁護士会 第一東京弁護士会
登録番号 55199
出身 私立攻玉社高校卒業
慶應義塾大学 経済学部経済学科卒業
九州大学法科大学院卒業
経歴 都内法律事務所勤務を経て、現事務所へ
大手金融機関出向経験有
現在、竹村総合法律事務所パートナー弁護士
取り扱い分野 消費者問題 離婚・男女問題 相続・遺言 交通事故
刑事事件 債権回収 不動産・住まい 企業法務
事務所HP http://www.kt-lawoffice.jp/ja/
松本先生のLINE相談予約 (24時間対応)
LINE@:@338qarc

 

1.最近の消費者詐欺の動向や特徴

はじめに最近の消費者詐欺の動向や特徴について教えてください。
弁護士
仮想通貨などを巧みに使っているのが最近の特徴です。

まず、加害者はマッチングアプリなどで相手を見つけると、「LINEでお話しましょう」と誘導してきます。加害者は、LINEに誘導した被害者と、最初は日常会話のようなやり取りをした後に、

「今、仮想通貨を利用した投資をしていて結構設けている、あなたもやりませんか?」「ウォレットにビットコインを送ってください」などとして独自の取引所とか独自の銘柄等の投資話を持ちかけてきます。

しかし、そうして、ビットコインを送金すると取引所のウォレットやホームページが送られてきますが、それらはしばらくすると、アクセスできなくなります。そして、返金などを希望して連絡すると、「手続き料がかかるので先に30万円支払え」など再度の送金を要求されます。。そのような手口がともかく多いのです。最近のトレンドと言えます。

厄介なのは足がつかないことように巧妙に対応していることです。詳細な手口は、真似をする人が出てくるのでここでは申し上げられませんが、共通しているのは個人情報を明らかにしないことです。

加害者本人相手には、追跡ができないため責任追及できないケースもあり、マッチングアプリの運営などに責任追及をすることもありますが、場所を提供しているプラットフォーム業者の責任は未だ法的な議論が深まっていない分野であるので、試行錯誤という現状があります。

(注)仮想通貨のウォレット
仮想通貨を保管するデジタルな財布のこと。実際に仮想通貨のコイン本体が入っているわけではなく、保有しているコインを引き出すための「秘密鍵」を保管しているものです。

参考記事:
コインペディア運営委員会(仮想通貨のウォレットとは? 種類・おすすめウォレットを紹介)

2.なぜ簡単にだまされるのか。

随分簡単にだまされるんですね。
弁護士
突き放した言い方になってしまいますが、「脇が甘い」としか言いようがありません。

「私は大丈夫だ」と思っていたという人も多く相談にいらっしゃいます。特に、仮想通貨などは、ご自分が扱ったこともなく実態も知らないのに、相手が言われるままに手を出してしまうのです。

情報商材ならば、まだ、商材の良し悪しの見極めがつくかもしれないのですが、仮想通貨については、ご自身に全く知識がなく、良し悪しの見極めもつけられないでしょう。

なお、情報商材について紐づけてお話しすると、同様に被害者側に知識のない分野に誘い込んでいく手口があります。例えば、投資スクールなどとして50万円ぐらいをまず投資させ、教わったスキルをもって収入が上がらないと抗議すると「追加オプションがあるから」などと上級講座を進めて、竹の子みたいにさらに投資させる手口です。

また、スクール代で投資の為の種銭がない人や損失補填のために、詐欺グループは人を紹介して紹介料を受け取らないと利益が上がらないと錯覚させる仕組みになっていて、被害者が増えてしまう仕組みになっています。このような手口をポンジスキームといい、古典的ですが騙される人が後をたちません。

仮想通貨など、知らない分野のことなのに、なぜ手を出してしまうのでしょうか。
弁護士
ご本人が実態を知らないからこそ、相手方は羽振りのいい話をしてくるのです。
InstagramやYouTubeで、海外で豪遊している写真、高級車の写真など羽振りのよさそうなキラキラした画像などを示して、儲かりそうなイメージを作出して、本人に簡単に儲かりそうなイメージを植え付けていくのです。

3.弁護士も対応に苦慮

それでは弁護士さんとしても対応に苦慮されるのではないでしょうか。
弁護士
その通りです。詐欺グループの資産の隠し方、資金の逃し方が大変巧妙になっています。あの手この手で逃げようとしてきます。
消費者センターなどに弁護士に相談するように勧められても、「弁護士に相談するなら着手金が必要」と考える方が多く、ご本人としては相談するハードルが高くなってしまっているのが現状だと思います。

4.松本先生へのご相談の場合の報酬体系

先生のところでは報酬体系はどのようになっているのでしょうか。
弁護士

二通りの報酬体系を設けています。

①着手金5万円~10万円程度で、まずは、相手方に書面や電話などで交渉してみますが、結果いかんを問わず1、2ヶ月で区切ります、という約束でお引き受けする体系。
②着手金20万円から30万円程度をいただき、最後まで追求していくという体系。
※裁判所へ納める印紙代などの実費が別途かかります

要するに、リーズナブルな条件でともかくあたってみる、という方法と、最後まで徹底追及する、という方法の選択肢を設けているわけです。

被害者は大まかに、金銭の問題じゃないという人と、とにかく被害回復のために動きたいという人の2通りに分かれています。そのため、このように体系を分けておかないと、被害者に応じた対応ができませんし、最終的に泣き寝入りしてしまうケースが後を絶たないからです。

5.集団での対応・集団訴訟などの新しい動き

集団訴訟というようなことも考えられるのでしょうか。
弁護士
後述の通り、集団訴訟だと、一人当たりの費用はかなり抑えられるので、被害者を募って、集団で交渉するということを私なりに試行錯誤しています。

例えば、ご相談に来られた被害者に同様の被害に遭った人がいないか探してもらう、ということもやっていますが、被害者任せではどうしても限界があります。SNSなどで同様の被害にあった人がいないかを募るという方法も検討しています。

被害者を募るためのプラットフォームを作るには、名誉毀損との兼ね合いや広告の仕組みなど様々な費用もかかります。そのため、現段階で全く問題のない仕組みはないと感じています。しかし、社会正義のためにも、安全に消費者被害を回復できるようななやり方を模索すべきと考えています。

多数の被害者が集まった場合には次のようなメリットもあります。

多数の被害者が集まれば、着手金も比較的安く、相手方としっかり交渉ができる可能性が生まれます。例えば50人集まれば、しっかりとした追求をする方法であっても、お1人当たり着手金は3万円程度で済むと思います。

なお、交渉の結果回収できたものがあれば、弁護士報酬を控除して被害者に公平に分配するということになります。ただし、集団訴訟(あるいは集団での交渉)について一つ注意すべきことがあります。「出し抜け」ができないことです。

このような事件では、実際の行為者のみならず仲介者等とも損害賠償請求の交渉をすることがあります。
例えば10人の人が集団で交渉しているときに、1人だけが例えば、加害者や紹介者や仲介者とうまくコンタクトを取って、自分の分だけ回収する、といったことは原則として許されないのです。

6.回収が期待できる金額・回収に要する期間

どれぐらい回収できるのでしょうか。
弁護士
一部分だけの回収なら案外簡単にできることがあります。例えば、1,000万円の被害について100万円で折り合うといったことです。被害額と比べれば微々たるものですが。

このような1、2割程度の回収ならば、期間的にも比較的早く、1、2ヶ月で回収できることもあります。そうでなく、きちんと回収するとなると、時間も手間もかかります。半年1年とかかることがあります。

相手方も、弁護士が介入して裁判などというのもわずらわしいので、「1,000万円の案件で、100万円で片がつくのなら和解してしまおう」等と考えるのでしょう。

妥協すれば早い、ということになります。加害者というのは、いろいろな人をだましてお金を集めています。手間のかかりそうな被害者なら、さっさと手を打ってけりをつけよう、と思うのでしょう。

裁判して判決をとっても、回収の場面で相手の財産がないというケースもあるので、早期の示談にあたっては、そのあたりのバランス感覚は大事です。率直に言うと、数カ月で半分以上返済されれば大成功だと思います。もっとも、その手打ちのための資金は、新しい被害者から取り立てた資金から回しているのかもしれません。

要するに自転車操業です。根本的な被害解決の方法にはなっていないのです。私は加害者側の弁護をすることもあります。もちろん、刑事事件などで黒を白ということはできませんが「すみませんでした。」と謝って、示談でケリをつけるということです。

その時のお金の流れを見ると、今言ったように別の被害者のお金を示談金にまわしているようにも見えることがあります。

7.被害にあわないための対策・被害にあったときの対応

最後に、被害にあわないため、あるいは被害にあったときの対応についてのアドバイスをお願いします。
弁護士

①被害に遭わないために
まずは、人に相談してみることをおすすめします。
「こんな話があるけどどう思う?」等と人に聞いてみれば、冷静な判断ができるのではないでしょうか。少なくとも、お金を渡すことを求められたときには、実際に渡す前に人に相談してみることです。

また、個人情報を開示しない相手は信用できないと考えるべきです。せめて電話番号や銀行の口座情報などはちゃんと聞いておくことです。それすらも開示しない相手なら、取引すべきではありません。
そして、LINEは知っているという状況は、個人情報を持っていることにはなりません。とりわけ、LINEもIDすら示さずQR コードしか示さない相手は信用できないと考えるべきです。

また、仮想通貨など新しい取引なら、ご自分でやってみて、どんな仕組みか、どんな内容なのかを知ってから取り組むべきです。ご自分でちゃんと知識を持ってから、それでは人に運用を任せてみよう、といった判断をすべきです。自分が知らない問題について、人の話をうのみにしてはいけない、ということです。

②被害にあったときは:
ともかく弁護士と相談することです。

なお、特に強調しておきたいのですが、債権回収屋のような業者には相談は慎重に検討してください。これらの業者はかなりグレーな事をやっています。このような業者が交渉すること自体が、そもそも非弁行為(注)であり弁護士法等で禁止されています。

下手をするとご自身が刑事事件の共犯者にすらなりかねないため、慎重に検討したうえでご利用ください。

また、消費者センターなどでは対応はできないと思われます。結局、「弁護士に相談してください」と言われることになるでしょう。なお、警察に相談して被害届を出す、ということをお考えならば、都心の忙しい警察署はふさわしくないでしょう。たらいまわしにされることが多いと思われます。

一つのテクニックですが、都会から離れた比較的余裕のある警察署と相談するほうが、親身に相談にのってくれる可能性があります。ご自分の親元だとか、被害者の1人がそこにいるとか、いろいろな理由をつけて地方の警察と相談すれば、案外被害届を受付てくれることもあるようです。

警察に被害届が出されたとなると、弁護士としても相手方と交渉しやすくなります。

(注)非弁行為(非弁活動)
弁護士の資格のない者が、報酬を得るために、示談交渉などの法律行為・法律事務を取り扱うことをいいます。弁護士法72条で禁止されています。違反者には、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金という刑事罰が科されます(同法77条3号)。

執筆者情報

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この記事のインタビュー担当者:玉上 信明(たまがみ のぶあき)・社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)・登録番号:第27821695号・ 健康経営エキスパートアドバイザー(東京商工会議所認定資格)・ 三井住友信託銀行にて法務・コンプライアンス関係の企画・研修に従事。 2015年10月同社を65歳定年退職後、社会保険労務士として開業

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