消費者詐欺被害(特に出会い系)について| Duel(デュエル)パートナー法律事務所 正野嘉人弁護士に伺いました

消費者詐欺被害防止に注力されている
Duel(デュエル)パートナー法律事務所
弁護士 正野 嘉人(しょうの よしと)先生および
依頼者からのご相談を受付ておられる担当の方にお話を伺いました。

・最近の消費者詐欺とりわけ出会い系の動向や特徴
・返金される可能性、返金までの時間
・被害にあわないための心構え、あった時の対応(弁護士相談がふさわしい理由)

など、みなさんの気になる疑問点について丁寧に解説していただきました。
この記事をご一読いただき、被害の防止と解決にお役に立てれば幸いです。

インタビュー担当:玉上 信明(たまがみ のぶあき)
(社会保険労務士・健康経営エキスパートアドバイザー)

Duel(デュエル)パートナー法律事務所
弁護士 正野 嘉人

所属弁護士会 東京弁護士会
登録番号 第19816号
出身 1957年   東京都出身
1977年   私立開成高校卒業
1983年   司法試験合格、翌1984年3月東京大学法学部卒業
1986年   司法研修所卒業
1986年4月 弁護士登録 東京綜合法律事務所入所
1989年    パートナーとなる
1997年   独立してDuel(デュエル)法律事務所(旧 正野嘉人法律事務所)開設
取り扱い分野 ネット上での様々なトラブル(詐欺、未入金、未成年者のケース等)
悪徳商法(先物取引・商品取引・各種ファンド・FX・マルチ商法・オレオレ詐欺など)
労働問題(解雇、雇い止め、未払い賃金、社会保険、過重労働、残業代、労災その他)
交通事故(後遺障害の等級認定への異議申し立て、医師との交渉なども含)
相続(生前贈与や節税策、中小企業の承継への事前準備など)
離婚(婚姻費用分担・親権や監護権・子の取戻し、面会交流、年金分割)
闇金融業者対応(取立てストップなど)
外国人関係(在留資格、離婚、労働、刑事等)
など、中小企業及び個人の民事・商事・刑事事件を広く扱います。
事務所HP https://duel-lawoffice.jp/

正野嘉人弁護士およびご担当の方は、実際に依頼者からの相談を受付ておられます。一日に何件も相談があり、月間では何百件と受け付けておられるそうです。
とりわけ出会い系詐欺などについて、生々しいお話を伺うことができました。

1.最近の出会い系などの詐欺被害の特徴

最近の出会い系などの詐欺被害の特徴はどのようなものでしょうか。
弁護士
問題なのは相手が追求を避けるために、危なくなるとすぐ会社をたたんだりして行方をくらますことです。まさに「いたちごっこ」になっています。
受け取りの銀行口座は、浮浪者などから買い取ったいわゆる「捨て口座」です。
入金されればすぐ出金されてしまいます。差し押さえても空振りに終わってしまうのです。
いわんや、現金手渡しといった形でお金が渡ってしまえば、証拠も残らないし返金も困難になります。そして、本人と連絡がつかない、という形で姿をくらましてしまうわけです。
バッグなど商材の販売などであれば、「商品をあとで送ります」といって先にお金を送らせ、その後商品は送られてこない、といったようなものですね。

2.詐欺被害の手口・だまし方

どんなふうにしてだますのでしょうか。
弁護士
ともかく SNS などで不特定多数の相手に大量に誘惑的な情報をばらまいていきます。その中には引っ掛かる人が出てくる、というわけです。

出会い系について言えば、おじさんには若い女の子が、
おばさんには若い男の子がサクラとなって接触し、はじめのうちはLINE などでやりとりしています。

そのうちに「LINEが壊れた」「携帯がこわれた」と言ってきて、「このサイトでやり取りしましょう。直ったらまたLINEでのやりとりにしましょう。」などといって特別のサイトに誘導していきます。

そのサイトでお話するのに「送信に何ポイントかかります。」といった対価が要求されます。また「文字化けしている」「個人情報が入っているので、回復するのに何ポイント必要です。」など、いろいろな名目のやりとりを繰り返してお金を消費させていきます。

Ⅰ回あたりは2000ポイントとか2万ポイントとかの比較的少額のお金ですが、それを繰り返していくのです。
これはサイト利用にかかる費用なので、クレジットや銀行振込みが用いられます。
恋愛めいたやりとりをしたり、アイドルデビューする等といったやりとりを繰り返していきます。
そのうちにサイトが閉鎖されてしまい、証拠も残らなくなってしまうのです。

情報商材詐欺との対応の仕方の違いがあります。情報商材ならば、1回例えば30万円といったまとまったお金を要求してきますが、結果が出なければ、だまされた側もすぐに気が付いてやめてしまうでしょう。

出会い系については、初めは何万円程度の小口の要求を、少しずつ長期間にわたって繰り返していきます。結局、使うお金はトータルでは情報商材などより多額になっていくのです。一度に要求するお金はそれほど多額ではありません。どんなに多くても20万円程度のものです。〇〇を解除するためになどといった名目です。

なお、通常のやりとりのお金は数万円程度ということが多いのですが、これが「支援金」となると、多額のお金を要求してきます。「支援金」というのは「〇○に当選したのでお金がもらえる。そのためにいくら出して欲しい。」あるいは、「遺産を譲りたいが、入手するために費用がかかる」などといったものです。

その準備費用などと称して、まとまったお金を要求してくるものです。
「タダでもらえる。」「特別に」「あなただけに」等と言葉巧みにだましてきます。
「それを手に入れるのに費用がかかるので、事務局に振り込んでください。」といった手口です。

通常では絶対に考えられないようなことです。
そんなうまいストーリーでも、中には反応してしまうお客さんがいるのです。
普通の人なら無視してしまう程度のお話です。

しかし中には、このような荒唐無稽(こうとうむけい)な話でもリアクションしてしまって、どんなものかなと興味を持って閲覧などしているうちに、だんだん深みにはまっていくのです。それも、相手を見て、出せるお金を値踏みして、場合によっては値引きするなど対応してきます。「通常は30万円だが、今日中に払ってもらえるなら25万円でよい。」といった類の手口です。

※荒唐無稽・・・でたらめな話、根拠のない話

3.消費者センター・警察などとの相談の問題

消費者センターや警察に相談することについては、いかがでしょうか。
弁護士
多数の苦情が寄せられているような業者なら、消費者センターでも情報を把握しており、警察とも連動し、連絡したり対応してくれることもあります。

しかし業者の側も、センターに苦情が多数寄せられるなど問題になりそうだと思えば、会社を潰してさっさと逃げてしまいます。こうなると、センターでは対応できなくなります。

またそもそも消費者センターでは、返金交渉などはできません。警察に相談して「詐欺被害」だと言っても、立証も難しいでしょう。
相談者が「サクラ詐欺」といっても、本当にサクラですか、真実なのかもしれない、と思われてしまうかもしれません。詐欺だという立証はうん難しいでしょう。

4.Duel(デュエル)パートナー法律事務所に相談した場合の資金の押さえ方

貴事務所に相談した場合、どのように相手方の資金を押さえるのですか。
弁護士
クレジット払いなら、2ヶ月程度の間なら返金取消できる可能性はあります。
銀行口座も口座にお金が入っておれば、取り戻しの可能性はあるし、口座凍結といったことも考えられるでしょう。但し、前述の通り、入金してもすぐ出金されてしまうので、口座から取り戻すのは実際には困難です。いわんや現金を渡したような場合などは回収はとても難しくなります。

5.Duel(デュエル)パートナー法律事務所での対応の仕方・交渉のテクニック

貴事務所ではどのように対応され、どのように交渉されるのでしょうか。
弁護士
まず依頼者から経緯を聴き取ります。その上で、相手方に対して「だまされていると思われる」などとして、特定商取引法や消費者契約法違反になりうることを主張した弁護士名の通知書を送ります。

取引の経緯などの証拠を示して、交渉を繰り返していくことになります。相手方業者の会社が運営されている間なら、交渉に応じてくれることもあります。しかし、会社を閉じてしまうような業者も多いのです。はじめからそもそも電話にも出ないし、連絡も取れなくなります。従って、対応は早くするにかぎります。

なお、これはテクニックですが、業者にすぐ金を返せと強く出ると、会社をたたんで行方をくらましてしまうおそれがあります。
場合によってはある程度泳がせながら、交渉していくこともあります。
すなわち、相手方も、ひょっとしたらまだ入金してもらえるかもしれないと思えば、すぐに取引は切らずに、交渉を継続できる可能性もある、というわけです。

ただし、満額返金というのは非常に難しいです。
相手方としても、満額返すのは、自らが詐欺を働いたと認めるようなものであり、応じにくいでしょう。依頼者とも相談してどこで折り合いをつけるか考えることになります。
訴訟を起こすのも難しいです。実際にどれだけ証拠を出せるでしょうか。どれだけ証拠を出せるか、期間も1年2年とかかるし費用もかさむでしょう。結局どこで折り合いをつけるかということになります。

6.Duel(デュエル)パートナー法律事務所の報酬体系

貴事務所では、報酬の体系はどのようになっているのでしょうか
弁護士
基本的には成功報酬体系です。
交渉がほとんどできない、と考えられる場合も多いからです。

例えば、やりとりの記録が残っていないとか、現金をそのまま渡した、といった場合なら交渉しようにも証拠がなく、当事務所としても対応できません。その旨を依頼者にはっきりとお伝えします。

また、返金の実績のある業者なら交渉の可能性はあります。そのようなことも依頼者に説明し、交渉するかどうかを決めていただくことになります。

返金の実績のない業者なら、返金実績のある業者の場合にどのように対応していくか、といったことを説明しながら「返金交渉をやってみますか、どうしますか。」と依頼者のご意向を伺います。
そのようなことなので、着手金という形では報酬はいただいていません。
交渉してみてお金が戻ってこなくても、ご本人に負担はかからないように配慮しています。。その分は事務所としての持ち出しになるわけですが、やむを得ないと考えています。

ポイント
依頼者から被害状況、被害金額などの話を聞いて、明らかに交渉ができない案件と判明した場合、その場で対応をお断りするケースもあります。交渉の余地がありそうな案件ならば、弁護士と相談して対応されていきます。

7.被害者の特性

被害者には年代とか性別とか特性があるのでしょうか。
弁護士
出会い系については、ある程度年代の高い人が多いようです。
すなわち、年代の高い男性が若い女の子に、年代の高い女性が若い男の子にだまされる、といったことです。あるいは、芸能人など普段会えないような人と思わせて、接触してくる、といったことです。
年代の若い人なら、相手を見つけたいのであれば、お金をかけずにマッチングアプリなどを活用しておられるでしょう。

なお、情報商材については、若い人や学生などの被害者も多いようです。お金が稼げると思ってだまされてしまうのでしょう。

次に、占い系ですが、これは被害者が幅広い年代層におよんでいます。普通の電話占いなどで1時間数千円といったのはよくあることで、詐欺とは言えないでしょう。そのうちに、やがて「幸運の数珠」といった物品で「運気が増す」「不幸がなくなる」など、「霊感商法」に誘導して、まとまったお金を要求してくるのです。

8.返金にかかる時間

返金にはどれぐらい時間がかかるのでしょうか。
弁護士
概ね2、3ヶ月程度で返金されることが多いようです。
はじめの1,2か月交渉して、その後少し経って返金に至るものです。
ただし、満額返金というのは非常に難しいです。

相手方としても、満額返すのは、自らが詐欺を働いたと認めるようなもので、応じにくいでしょう。結局、依頼者とも相談してどこで折り合いをつけるか、ということになります。
なお、先に申し上げた通り、少しお話を伺っただけでも返金困難と見極めがつく場合もあります。そのような場合については、当事務所としても早々にお断りしています。

9.被害にあわないための注意点、被害にあったときの対応

最後に、被害にあわないための注意点、被害にあったときにどうすべきか教えてください。
弁護士
おかしいと思えば早めに弁護士等に相談していただきたいです。
まとまったお金を要求してくれば、これはあやしいと思ってください。
また、ともかく証拠を残してください。

例えば、LINEだけでは、消えてしまえば全く追跡ができなくなります。メールのログを取っておく、サイトの画面キャプチャを取っておく、相手の電話番号など相手を特定できる情報を押さえておくなどといったことです。
先に申し上げた詐欺用のサイトなどは、IDパスワードでもそのうちに入れなくされてしまいます。あとで見ようとしても証拠が残っていないことになります。これも画面キャプチャなどを活用して手がかり・証拠を残してください。

また、繰り返しですが、現金を直接手渡すなど絶対にしないでください。こんなことは通常はやらないことだと思いますが、事務所で電話相談を受付ていると、本当に現金を手渡してしまっている人が現実におられるのです。それも、何十万円もの現金を渡してしまうのです。LINEで知り合っただけで見ず知らずの人になぜ渡すのか、と思ってしまうのですが・・。

また、だまされないためには、ともかくうまい話はない、ということに尽きます。
すぐに儲かる副業とか、高確率で競馬の価値馬を当てるなど、そんなものがあるなら自分でやっているはずで、人に教えるはずはないのです。

ご家族などは気がつかないのか。

依頼者が弁護士に相談した際に、ご家族などが気付くということはないのでしょうか。
弁護士
ご家族が気付くことは殆んどないと思います。基本依頼者がひとりで、スマホなどでやりとりしているだけで、ご家族が気付くことは難しいでしょう。本人もだまされたと思っても恥ずかしいから言わないでしょう。

執筆者情報

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この記事のインタビュー担当者:玉上 信明(たまがみ のぶあき)・社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)・登録番号:第27821695号・ 健康経営エキスパートアドバイザー(東京商工会議所認定資格)・ 三井住友信託銀行にて法務・コンプライアンス関係の企画・研修に従事。 2015年10月同社を65歳定年退職後、社会保険労務士として開業

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